「看護覚え書」 フロレンス・ナイチンゲール

「覚え書」の覚え書

 

住居の健康を守るための5つの基本的な要点

1.清浄な空気

2.清浄な水

3.効果的な排水

4.清潔

5.陽光

これらに不備や不足があれば、それに比例して、住居は不衛生となる。

 

看護師は、どういう状況ならば患者が耐えられるかについて充分な観察をしていないかぎり、立ったり動いたりしている患者に声をかけない、という絶対原則に立つこと、これがいちばんの基本である。

 

患者に何を食べさせるかを決める立場のひとの職務とは、あくまでも患者の胃の意見に耳を傾けることであって、「食品分析表」を読むことなどではない。まわりの人間が気を配って患者に与えるべきものとしては、食物は呼吸する空気に次いで重要なものである。

看護師の任務のなかでも他に比較できないほど重要な任務は、患者の呼吸する空気に注意を払うことに次いで、患者の食物の影響を注意深く観察して、それを医師に報告することなのである。

 

新鮮な空気についで病人が求める二番目のものは、陽光をおいてほかにはないということである。

 

看護師に課す授業のなかで、最も重要でまた実際の役に立つものは、何を観察するか、どのように観察するか、どのような症状が病状の改善を示し、どのような症状が悪化を示すか、どれが重要でどれが重要でないのか、どれが看護上の不注意の証拠であるか、それはどんな種類の不注意による症状であるか、を教えることである。

 

看護師は、脈拍のいろいろな変化の意味と、脈の性質が暗示していることを理解できなければならない。(略)~多くのことを教えてくれるのは、脈の性質なのである。「はねあがる」ような脈があるが、それは動脈瘤を案じしている。はっきりとした区切りのない脈で、それもリボンのような感じではなく、細い糸が空間の隙間を縫って走っているような感じのする脈がある。心臓疾患に特有の結代脈、急性肋膜炎の脈、腹膜炎の脈、急性の炎症あるいは出血の危険を告げる、ぴくぴくと震えるような脈などもある。熱病の消耗からくる即脈があるが、これは葡萄酒あるいは刺激物を与える時間がきた徴候なのである。

 

たとえ二、三時間といえども、ましてや何週間も何ヶ月も、汚れた空気のなかで眠ること、これこそ他の何よりも多く見られる原因であり、かつ最も致命的な原因なのである。こうした状態は、他のどのような状態よりも呼吸の働きを妨げ、病気中の「事故」死をもたらしやすい。

 

健康を保持し健康をとりもどす方法を教えてくれるのは、ただ観察と経験だけなのである。

 

この世の中に看護ほど(中略)~自分自身はけっして感じたことのない他人の感情のただなかへ自己を投入する能力を、これほど必要とする仕事はほかに存在しないのである。

 

看護師さん、あなた方は自分で「工夫」することをおぼえなければないのです。

もしあなたが、室内においても戸外においても、赤ん坊にいつも良い空気を吸わせ、しかもけっして赤ん坊のからだを冷え込ませないならば、あなたは優れた看護師なのです。